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高齢者福祉施設のウェブサイトを見やすく改善する実践的なユーザビリティ向上策

目次

はじめに

日本の高齢化が進む中で、福祉施設や介護事業所がウェブサイトを持つことは当たり前となりました。しかし、実際にサイトを利用する高齢者やそのご家族にとって「見やすく、使いやすい」ウェブサイトはまだ十分に普及しているとは言えません。
特に高齢者福祉施設のウェブサイトでは、利用者の年齢層や身体的特徴を考慮したユーザビリティが重要です。本記事では、2025年時点での最新の知見に基づき、施設運営者やウェブ担当者が「高齢者にとって本当に見やすいウェブサイト」を実現するための具体的な改善策を解説します。
専門用語はなるべく噛み砕いて説明し、実際の現場で役立つ実践例や注意点も盛り込みます。

ユーザビリティとは何か―高齢者向けサイトに必要な視点

ユーザビリティの基本定義

ユーザビリティとは、「使いやすさ」や「利用者にとっての分かりやすさ」を指します。ウェブサイトの場合、訪問者が迷わず情報を探し、目的の行動(例:資料請求・お問い合わせ)ができる状態を目指します。

高齢者ユーザーの特徴

高齢者ユーザーは、

  • 視力や聴力の衰え(小さい文字や薄い色が見えづらい)
  • 操作スピードが遅くなる傾向
  • パソコンやスマートフォン操作への不慣れ
  • 新しいUI(ユーザーインターフェース)への適応に時間がかかる

といった特徴があり、若年層とは異なる配慮が求められます。

なぜ高齢者施設のウェブサイトで特に重要なのか

高齢者自身やその家族が情報を探す際、ウェブサイトが「見づらい」「どこを押せばよいかわからない」と感じると、施設の信頼性や利用意欲にも影響します。そのため、他業種よりもユーザビリティへの配慮が重要です。

読みやすい文字サイズとフォントの選定

推奨される文字サイズ

高齢者向けサイトでは、本文の文字サイズを16px〜18px以上に設定することが推奨されています。小さすぎる文字は見落としや誤読の原因になります。
見出しは20px以上とし、重要な箇所やボタンなどはさらに大きくして区別を明確にします。

適切なフォントファミリー

日本語の場合は「メイリオ」「游ゴシック」「Noto Sans JP」などのサンセリフ体(ゴシック体)のフォントが、可読性が高くおすすめです。WindowsやMac、スマートフォンなど端末ごとに見え方が異なるため、複数のフォント(フォントファミリー)を指定すると安心です。

実際の設定例

用途 推奨フォントサイズ 推奨フォント例
本文 16〜18px メイリオ、游ゴシック、Noto Sans JP
見出し 20〜24px 同上
ボタン 18px以上 同上

色使いとコントラストの工夫

色覚バリアフリーとは

色覚バリアフリーとは、色の見え方に個人差があっても情報の判別ができるようにする配慮です。高齢になると色の識別能力が低下しやすいため、文字と背景のコントラストを強くし、重要な部分は色だけでなく形やアイコンも併用します。

おすすめの色の組み合わせ

  • 黒文字 × 白背景(もしくは薄いベージュ)
  • 紺色 × 薄いグレー背景
  • 赤や緑は、明度差を十分に取る

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)の基準では、4.5:1 以上のコントラスト比が望ましいとされています。

避けたい配色例

  • 薄いグレーの文字 × 白背景
  • 黄色文字 × 白背景
  • 赤文字 × 緑背景

上記は見えづらく、特に高齢者にとっては読み取りにくい配色です。

ナビゲーションの配置と表現

メニュー(ナビゲーション)はページの上部または左側に固定し、「ホーム」「施設紹介」「料金」「アクセス」「お問い合わせ」など主要な項目を分かりやすい日本語で表示します。
英語や略語(例:Info、Access)は避け、誰でも理解しやすい表記にしましょう。

パンくずリストの活用

パンくずリストとは、現在のページがサイト内のどこに位置しているかを示す補助的なナビゲーションです。これにより、利用者が迷子になりにくくなります。

ボタン・リンクのデザイン

ボタンやリンクは色や形で明確に区別し、クリックできる箇所を分かりやすくします。最低でも40px四方程度のクリック領域を確保し、指先の太い方でも押しやすいよう配慮しましょう。

情報構成とページレイアウトの最適化

情報のグルーピング

関連する情報をまとめて表示し、1ページ内に情報を詰め込みすぎないことが大切です。
例:

  • 「施設の紹介」→「施設概要」「設備」「写真ギャラリー」など
  • 「サービス内容」→「食事」「入浴」「リハビリ」など

重要情報の優先順位

ページの上部(ファーストビュー)に、利用者が知りたい情報(例:問い合わせ方法、料金、空き状況など)を配置します。これにより、スクロールしなくても主要な情報が目に入ります。

スペースの使い方

行間や余白(マージン・パディング)をしっかり取り、情報が詰まりすぎないようにします。特に高齢者は「ぎっしり詰まった画面」を苦手とする傾向があるため、余裕のあるレイアウトを心がけましょう。

アクセシビリティ対応の基本とポイント

アクセシビリティとは

アクセシビリティとは、障害の有無や年齢に関係なく、すべての人がウェブサイトを等しく利用できるようにする仕組みです。
例:音声読み上げ、キーボード操作、拡大表示に対応するなど。

画像への代替テキストの付与

写真やイラストには「alt属性(代替テキスト)」を必ず設定し、視覚以外でも内容が伝わるようにします。
例:「施設外観の写真」「食堂で利用者が食事する様子」など、具体的に説明すると親切です。

音声読み上げ・拡大表示の配慮

スクリーンリーダー(音声読み上げソフト)で正しく読み上げられるよう、見出しタグ(h1〜h3など)を正しく使い、装飾目的で画像を多用しないようにします。また、ブラウザの拡大機能でもデザインが崩れにくい構成を心掛けましょう。

スマートフォン・タブレット対応の重要性

高齢者のスマートフォン利用状況

総務省の調査(2024年)によれば、70歳代のスマートフォン保有率は約80%となり、タブレット利用も増加傾向です。家族が代理で検索する場合も多く、モバイル対応は不可欠になっています。

モバイルファースト設計

「モバイルファースト」とは、スマートフォンでの見やすさ・操作しやすさを最優先に設計する考え方です。

  • メニューは大きなボタンで表示
  • 横スクロールや拡大縮小が不要なレイアウト
  • 文字やボタンサイズの自動調整

などがポイントになります。

レスポンシブデザインの導入

1つのサイトでパソコン・スマホ・タブレットの画面サイズに自動対応できる「レスポンシブデザイン」を導入すると、運用コストも抑えられます。2025年現在、主要なCMS(WordPressなど)は標準で対応しているため、積極的に活用しましょう。

お問い合わせフォームの最適化

入力項目の絞り込み

高齢者やその家族がストレスなく入力できるよう、「名前」「電話番号」「お問い合わせ内容」など必要最小限の項目に絞りましょう。入力項目が多いと途中で離脱されやすくなります。

入力補助とエラー表示

郵便番号から住所を自動入力したり、入力ミスがあれば何が間違っているかを日本語で明確に示します。例えば「電話番号が未入力です」や「メールアドレスの形式が正しくありません」など、分かりやすいメッセージを表示します。

送信後の案内とサポート

フォーム送信後には「送信が完了しました。2営業日以内にご連絡いたします」などの案内をわかりやすく表示し、不安を軽減する配慮が大切です。
また、電話・FAXなどウェブ以外の問い合わせ手段も明記しましょう。

写真・動画コンテンツの活用方法

写真は「雰囲気」が伝わるものを選ぶ

施設外観や内部の様子、スタッフ・利用者の笑顔など、実際の雰囲気が伝わる写真を掲載すると、安心感が生まれます。写真は明るく鮮明なものを選び、被写体が小さすぎないよう注意しましょう。

動画のメリットと作成ポイント

動画は、施設案内やサービスの流れ、リハビリの様子などを直感的に伝えるのに有効です。ただし、長すぎると途中で離脱されやすいため、1〜2分程度にまとめると良いでしょう。
音声が聞こえにくい方のために、字幕(テロップ)も付与します。

画像・動画の読み込み速度への配慮

容量の大きい写真や動画は表示速度を遅くするため、適切なサイズに圧縮し、ウェブ用のフォーマット(JPEG、WebP、MP4など)を活用します。表示が遅いと、利用者の離脱が増える傾向があります。

高齢者施設向けウェブサイトのSEO基礎

SEOとは何か

SEO(検索エンジン最適化)とは、Googleなどの検索結果で上位に表示されやすくするための施策です。高齢者福祉施設の場合、「地域名+施設名」「サービス名+エリア」などで検索されることが多いです。

ページタイトル・見出しの工夫

ページタイトルや見出し(h1〜h3)は、実際に検索される言葉を意識して記述します。例:「東京都〇〇区のデイサービスなら〇〇」「入所相談・見学受付中」など。
不自然なキーワード詰め込みは避け、自然な日本語を心がけましょう。

ローカルSEOのポイント

Googleマップや「Googleビジネスプロフィール」に施設情報を登録し、住所・電話番号・営業時間を正確に記載します。地域に根ざした情報発信が集客に繋がります。

伝わるコンテンツ作成のコツ

ターゲットユーザーを明確に想定

「高齢者本人」「その家族」「ケアマネジャー」「医療関係者」など、誰が情報を探しているのかを想定し、それぞれが知りたい内容を整理します。

よくある質問(FAQ)の充実

利用検討者は「費用は?」「空き状況は?」「見学できる?」など、よくある疑問点を持っています。Q&A形式で掲載することで、問い合わせ件数や業務負担の軽減にも役立ちます。

ストーリーや利用者の声

実際に利用している方やご家族の声を紹介することで、リアリティや安心感が伝わります。文章だけでなく、写真やイラストも活用しましょう。

改善事例とビフォーアフターの具体例

ビフォー:改善前の課題

  • 文字が小さく、グレーの背景で見づらい
  • メニューが英語表記で分かりにくい
  • 画像が多く表示速度が遅い
  • スマートフォンではレイアウトが崩れる

アフター:改善後の変化

  • 文字サイズを18pxに拡大し、黒文字×白背景に統一
  • メニューを「ホーム」「サービス内容」など日本語に変更
  • 画像を圧縮し、重要な写真だけ厳選
  • レスポンシブデザインでスマホにも最適化

これにより、閲覧者から「見やすくなった」「探したい情報がすぐ見つかる」といった反応が増えました。

定量的な効果指標

改善後、

  • ページ滞在時間が30%向上
  • お問い合わせ件数が1.5倍に増加
  • 離脱率が20%改善

など、数字で確認できる成果が現れることが多いです。

運用体制と定期的な見直しの重要性

運用担当者の役割

ウェブサイトは作って終わりではなく、日々の運用と情報更新が不可欠です。施設内で更新担当者を決め、定期的に内容を見直しましょう。

利用者からのフィードバック収集

実際に利用した高齢者や家族、スタッフから「見やすいか」「分かりにくい点はないか」などの意見を定期的に集め、改善に活かします。

アクセス解析の活用

Googleアナリティクスなどの無料ツールを使い、どのページがよく見られているか、どこで離脱が多いかを確認します。数字を基に改善点を発見できます。

セキュリティと個人情報保護の配慮

SSL化(HTTPS対応)の必須化

2025年現在、個人情報を取り扱うウェブサイトは、SSL(https://)で通信を暗号化することが事実上必須です。お問い合わせフォームや資料請求ページなど、入力情報の保護が求められます。

個人情報保護方針の明示

プライバシーポリシー(個人情報保護方針)を明記し、どのような目的で情報を収集・利用するかを説明します。これにより、利用者の安心感が高まります。

データ管理と内部体制

収集した情報の管理方法や、アクセス権限・管理担当者の設定など、内部でのセキュリティ体制も見直しましょう。情報漏洩などのリスクを未然に防ぐ意識が重要です。

最新の法令・ガイドライン対応

情報バリアフリー法のポイント

日本では「障害者差別解消法」や「情報バリアフリー法」など、ウェブアクセシビリティに関する法令が拡充されています。公共機関だけでなく、民間の福祉施設にも順次適用範囲が広がっています。

厚生労働省・自治体の指針

厚生労働省や各自治体が発表する「高齢者・障害者向けウェブサイト制作ガイドライン」も参考になります。2025年時点では、

  • 十分な文字サイズ
  • 音声読み上げ対応
  • 画像の代替テキスト

などが推奨事項として明記されています。

今後の義務化動向

将来的には、より厳格なアクセシビリティ対応が義務化される流れです。ウェブ制作・運用時は最新の法令情報を定期的に確認し、適切に対応することが求められます。

自施設で今すぐできる見直しチェックリスト

チェックリスト例

項目 確認内容
文字サイズ 16px以上になっているか
色・コントラスト 文字と背景の色差が十分か
ナビゲーション 主要メニューが分かりやすい配置・表記か
スマホ対応 スマートフォンでも見やすいか
お問い合わせフォーム 入力項目数が多すぎないか
画像・動画 容量が大きすぎないか、altタグは付いているか
プライバシーポリシー 明記されているか

現場での運用例

スタッフ同士でサイトをチェックし合い、「高齢のご利用者やご家族にも分かりやすいか」を確認しましょう。年1回程度の定期点検がおすすめです。

改善サイクルの構築

気付いた点はすぐにメモし、改善案として関係者で共有すると、サイトの質が継続的に向上します。

高齢者施設サイトによくある質問(FAQ)

Q1. どのようなデバイスでサイトを見ればよいですか?

当施設のウェブサイトは、パソコン・スマートフォン・タブレットなど、主要なデバイスで快適にご覧いただけるようレスポンシブデザインを採用しています。特にスマートフォンからのアクセスが増えているため、画面の拡大やスクロール操作が苦手な方でも使いやすい設計を心がけています。

Q2. 目が悪い場合、どのように見やすくできますか?

ブラウザの拡大機能や、端末のアクセシビリティ設定をご利用いただくことで、文字を大きく表示したり、コントラストを強くすることが可能です。また、当サイトでは16px以上の大きな文字サイズと、はっきりした配色を標準としています。ご不明な点はお問い合わせフォームやお電話でご相談ください。

Q3. サイトの情報はどれくらいの頻度で更新されていますか?

施設の最新情報やイベント、空き状況などは、原則として月1回以上、必要に応じて随時更新しています。情報が古い場合や、掲載されていない内容については直接ご連絡いただければ、個別にご案内いたします。

高齢者向けウェブサイト運用時の注意点

誤操作や誤認を防ぐための配慮

高齢者ユーザーが誤ってリンクやボタンを押してしまうケースは少なくありません。重要な操作(例:送信、申し込みなど)には「確認画面」や「本当に実行しますか?」といったダイアログを設けると安心です。また、広告バナーや外部リンクを過度に配置すると誤クリックの原因になるため、配置やデザインには十分注意しましょう。

情報の過不足と専門用語の排除

情報量が多すぎても少なすぎても混乱を招きます。ページごとに伝えるべき内容を整理し、「専門用語」「略語」はなるべく使わず、やむを得ず使用する場合は簡単な説明や注釈を加えます。利用者の視点で「自分に必要な情報がどこにあるか」を常に意識しましょう。

サポート体制の明示

ウェブ上だけで解決できない場合のために、電話やFAX、対面での相談窓口も必ず明記します。高齢者やご家族が不安を感じた際にすぐ相談できる体制を整えることで、安心してサイトを利用してもらえます。

実践事例:現場スタッフの声と成功ポイント

現場スタッフによる改善の取り組み

ある福祉施設では、スタッフ自身が高齢の家族や知人にサイトを使ってもらい、感想や不便に感じた点をヒアリング。その結果、「トップページに料金表へのリンクがない」「写真が小さくて分かりにくい」といった具体的な課題が判明し、すぐに改善へとつなげました。現場の声を反映することで、利用者目線のサイト作りが推進できます。

利用者家族からのフィードバック

実際に施設を検討したご家族からは、「写真が多くて雰囲気が伝わり安心できた」「問い合わせ方法が複数あって助かった」といった好意的な意見が寄せられています。こうした声は、今後の改善の指針としても非常に有用です。

改善後の運用サイクル

一度リニューアルしたら終わりではなく、定期的にアクセス解析やアンケートを実施し、課題があれば都度修正を加える運用体制が重要です。小さな改善を積み重ねることで、より高齢者に優しいウェブサイトが実現できます。

まとめ:高齢者福祉施設のウェブサイトは「見やすさ」と「安心感」が最優先

高齢者福祉施設向けウェブサイトの改善は、単にデザインを整えるだけでなく、利用者やそのご家族の安心感や信頼につながる重要な取り組みです。読みやすい文字サイズや明確な配色、分かりやすいナビゲーション、アクセシビリティ対応など、基本的なポイントを一つひとつ押さえましょう。
加えて、FAQやチェックリスト、現場の声などを活用し、運用体制やサポート窓口の明示も不可欠です。
「誰にとっても使いやすい」サイトづくりは、施設の価値向上と利用者満足度の向上に直結します。今一度、自施設のウェブサイトを見直し、必要な改善を着実に進めていきましょう。

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