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福祉向けホームページ制作を依頼するときに気をつけるべき実践的なポイント
目次
はじめに
福祉施設や社会福祉法人がホームページ制作を外部に依頼する際、専門性や法令対応、利用者の使いやすさなど、一般企業とは異なる独自の配慮が求められます。2025年現在、情報公表の義務化や高齢者・障害者へのアクセシビリティ強化など、社会的な要請も高まる一方です。本記事では、福祉向けホームページ制作を依頼する際に押さえるべき注意点を、実務担当者の視点で分かりやすく、かつ具体的に解説します。初めて制作を依頼する場合も、リニューアルや運用改善を検討中の場合も、失敗を防ぎ、目的に合ったサイトを構築するための実践的なチェックポイントを網羅的に紹介します。
ホームページ制作の目的を明確にする重要性

目的設定が成否を左右する理由
福祉施設のホームページを制作する際、まず最初に明らかにすべきなのが「何のために作るのか」という目的です。
例えば、
- 新規利用者や家族への情報提供
- 採用活動の強化
- 法令に基づく情報公開(重要事項説明書の公表など)
- 地域社会との交流・信頼形成
など、目的によって必要なコンテンツやデザイン、機能が大きく異なります。
制作会社への依頼時には、目的を具体的な言葉で伝えることが、意図に沿ったホームページを作る第一歩となります。
目的別に必要な機能の例
| 主な目的 | 必要な主な機能・コンテンツ例 |
|---|---|
| 利用者募集 | 施設紹介、サービス内容、料金表、空き状況表示、問い合わせフォーム、見学予約機能 |
| 採用強化 | スタッフインタビュー、職場環境紹介、募集要項、応募フォーム |
| 法令対応 | 重要事項説明書等の掲載ページ、PDFダウンロード、サービス情報公表システム連携 |
福祉分野に強い制作会社の選び方
福祉特有の知識と実績の重要性
一般的なウェブ制作会社でもホームページ制作は可能ですが、福祉業界には独自のルールや利用者層があります。
例えば、
- 介護保険法や障害者総合支援法などの法令知識
- 高齢者・障害者向けのアクセシビリティ配慮
- 社会福祉法人特有の情報公開義務
これらを十分に理解している会社でなければ、見栄えは良くても実務に合わないサイトになってしまうリスクがあります。
実績ページで福祉関連の制作事例が複数掲載されているか、打ち合わせ時に法令や業界事情の話が通じるかを確認しましょう。
チェックリスト:制作会社選定時の質問例
- 福祉施設向けホームページの制作実績はどのくらいありますか?
- 介護・福祉業界の法令や公表義務に対応したサイト構築経験はありますか?
- 高齢者や障害者の利用を考慮したデザインや機能の提案はありますか?
- 公開後の法改正や制度変更時のサポート体制はどうなっていますか?
2025年以降の法令・ガイドライン対応のポイント

重要事項説明書のネット公表義務化と対応策
2025年から介護事業所等において、重要事項説明書類のインターネット公表が義務化されます。
ホームページ制作時には、以下のような対応が必要です。
- 重要事項説明書をPDF等でダウンロードできる仕組みを設ける
- サービス情報公表システムとの情報整合性を保つ
- 行政の最新ガイドラインに基づく掲載方法の確認
制作会社選びの際、これらの法令対応が可能かどうかも必ず確認しましょう。
アクセシビリティ強化の義務化動向
民間企業も含めたウェブアクセシビリティ(JIS X 8341-3:2016等)への対応が、福祉分野では特に重視されています。
2025年時点で、以下の配慮が求められるケースが増えています。
- 文字サイズの調整機能
- 音声読み上げに対応した構造設計
- 色覚バリアフリー配色の徹底
制作会社にアクセシビリティ対応実績や、具体的な実装例を提示してもらうことが重要です。
掲載コンテンツの選定と準備のコツ
利用者・家族視点での情報整理
ホームページの掲載内容は、施設の魅力や実態を分かりやすく伝えるために整理する必要があります。
具体的には、
- 施設やサービスの特長が簡潔に伝わる紹介文
- 利用料金や入居方法など、よくある質問とその回答
- 日常の様子が伝わる写真やスタッフ紹介
- 見学申込やお問い合わせへの導線
など、利用者や家族が「知りたい」と思う情報を優先して準備しましょう。
施設独自の取り組みや、地域との連携事例も積極的に掲載すると、信頼性向上に繋がります。
事前に準備しておくべき資料とその整理方法
スムーズな制作のためには、以下の資料を事前に用意し、制作会社と情報共有できる体制を作ることが大切です。
- 法人・事業所の基本情報(所在地・連絡先・代表者・設立年など)
- サービス内容・対象者・職員体制・協力医療機関等の詳細
- 重要事項説明書・運営規程・事業報告書等の法定書類(最新版)
- 写真素材(外観・内観・行事風景など)※個人情報・肖像権要注意
- ロゴ・パンフレット等のデザインデータ(あれば)
これらをフォルダ分けしてクラウドストレージ等で共有すると、手戻りが少なくなります。
デザイン・ユーザビリティで重視すべき点
高齢者・障害者にも配慮した設計のポイント
福祉向けホームページでは、主な閲覧者が高齢者や障害者、またそのご家族であることが多くなります。
- 大きく読みやすい文字サイズ
- コントラストが明瞭で見やすい配色
- 複雑な操作や動きの少ないシンプルな構成
- スマートフォンやタブレットでも見やすいレスポンシブデザイン
- 読み上げソフトに配慮したHTML構造
こうした点を制作会社に具体的に伝え、過去の制作例を見せてもらうと安心です。
施設の「らしさ」を表現するデザイン事例
おしゃれ過ぎて施設らしさが伝わらなかったり、逆に古臭い印象になってしまうこともよくあります。
良い事例としては、
- 施設のカラーやシンボルを活かした配色
- 利用者やスタッフの笑顔が伝わる写真の活用
- 日々の活動や地域交流の様子を紹介するコーナー
など、「その施設らしさ」が分かる工夫を盛り込むことが、信頼感や安心感につながります。
制作費用と見積もりの注意点

費用内訳を正しく理解する
ホームページ制作費用は、ページ数やデザインの複雑さ、システムの有無などによって大きく変動します。
見積もりを取る際は、以下の内訳を明確に確認しましょう。
- 企画・要件定義費用
- デザイン制作費用
- コーディング・システム開発費用
- 写真撮影・画像加工費用
- 原稿作成・ライティング費用
- CMS導入費用(WordPress等)
- 公開・サーバー設定費用
- 保守・管理・更新サポート費用
これらを分かりやすく説明してもらえる会社を選びましょう。
料金相場と安価な業者のリスク
福祉施設向けのホームページ制作費用は、5ページ程度の基本構成で30万円〜80万円程度が相場です。
極端に安価な業者の場合、
- 後から追加費用が発生する
- 法令対応やサポートが十分でない
- テンプレート流用で独自性が出せない
などのリスクも考えられます。
複数社から相見積もりを取り、費用の内訳とサービス内容をじっくり比較することが大切です。
制作スケジュールと進行管理のポイント
一般的な制作フローと目安期間
ホームページ制作は、下記の流れで進むのが一般的です。
- 要件ヒアリング・目的確認(1週間)
- 構成案・デザイン案作成(2〜3週間)
- 原稿・素材準備(2〜4週間)
- デザイン決定・コーディング(3〜5週間)
- 動作確認・修正(1〜2週間)
- 公開作業(1週間)
合計でおおよそ2〜3か月が平均的な目安です。
制作会社とのやりとりが遅れると全体のスケジュールも後ろ倒しになるため、施設内でも担当者や決裁者を明確に決めておきましょう。
進行管理で役立つ具体的な工夫
制作プロジェクトがスムーズに進むよう、以下のような管理方法をおすすめします。
- やりとりはメールだけでなく、進捗を一覧できるオンラインツール(Googleスプレッドシート等)を活用
- 社内の関係部署(事務・現場・経営層)と定期的に状況共有
- 写真や原稿の締切日を事前に明確化
- デザイン案や原稿案の確認担当者をあらかじめ決めておく
こうした工夫で納期遅延や手戻りを防げます。
個人情報・セキュリティ対策
ホームページ公開時の個人情報配慮
福祉施設のホームページには、利用者や職員の写真・氏名など個人情報が含まれる場合が多くあります。
公開前に、
- 本人・家族からの同意取得
- 顔が識別できる写真はモザイク等の加工
- 掲載範囲・掲載期間を限定
など、個人情報保護法や施設のガイドラインに基づいて慎重にチェックしましょう。
また、問い合わせフォームにはSSL(通信の暗号化)対応が必須です。
障害発生時のバックアップ・復旧体制の確認
ホームページがサイバー攻撃やシステム障害で閲覧できなくなるリスクも想定しておく必要があります。
制作会社に、
- 定期的なバックアップ体制の有無
- 障害発生時の復旧手順・対応時間
- 情報漏えい対策(セキュリティアップデート等)
の具体的な内容を確認し、契約書や仕様書に盛り込んでおくと安心です。
公開後の更新・運用体制の整備

情報更新の頻度と担当者の役割
ホームページは公開して終わりではなく、最新情報の掲載や法令対応、イベント情報の追加など、日常的な運用が不可欠です。
- イベント・行事の報告、求人情報の更新
- 制度改正時の情報反映
- 重要事項説明書等の最新版掲載
など、月1回程度の定期更新が推奨されます。
運用担当者を事前に社内で決め、必要な操作マニュアルやサポート体制を整えておくことが大切です。
CMS導入と外部サポートの活用方法
WordPress等のCMS(コンテンツ管理システム)を導入すれば、専門知識がなくても簡単に情報更新が可能です。
ただし、セキュリティアップデートやバックアップ、バグ修正などは専門的な知識が必要な場合も。
制作会社の運用サポートや、月額保守サービスもあわせて検討することで、長期間の安心運用につながります。
検索エンジン最適化(SEO)と集客の基礎
検索されやすいサイト構成のポイント
福祉施設にとっても、Google等の検索エンジンで上位表示されることは新規利用者や家族の獲得に直結します。
- 施設名やサービス名をタイトルや見出し(h1, h2等)に明記
- 所在地や連絡先など基本情報をページ内に記載
- 「介護施設+地域名」など、地域性を意識したキーワードを盛り込む
- 重要事項説明書や事業内容の詳細説明ページを設ける
制作会社にSEO対策の経験や実績を確認し、必要に応じてコンテンツ作成のサポートを依頼しましょう。
Googleビジネスプロフィール活用例
Google検索やGoogleマップ経由での集客強化には、Googleビジネスプロフィール(旧:Googleマイビジネス)の登録・活用が有効です。
- 正確な施設情報や写真を掲載
- 利用者や家族からの口コミ対応
- 営業時間やサービス内容を随時更新
これにより、ホームページと連動した集客チャネルを確保できます。
写真・動画活用のポイントと留意点
施設の魅力を伝える写真・動画の撮影と選び方
実際の施設の雰囲気やスタッフの様子は、言葉だけでなく写真や動画で伝えることが効果的です。
- 清潔感のある外観・内観写真
- スタッフや利用者の日常風景(同意取得必須)
- 季節イベントや地域交流の様子
プロカメラマンに依頼する場合は、福祉施設での撮影経験があるかどうかも確認ポイントです。
肖像権・著作権など法的リスクへの配慮
写真・動画の公開には、肖像権や著作権への配慮が不可欠です。
- 利用者や職員の顔が映る場合は、本人や保護者から必ず書面で同意を得る
- 著作権フリー素材や自施設で撮影したもののみを使用
- 撮影時の同意書テンプレートを用意しておく
法的なトラブル防止のためにも、公開前の最終チェックを徹底しましょう。
よくあるトラブル事例とその防止策

制作依頼時のすれ違いパターン
福祉施設のホームページ制作では、施設側と制作会社の認識のズレによるトラブルが時折発生します。
例えば、
- 依頼したい機能やページ数が見積もりに入っていなかった
- 重要事項説明書の掲載様式が法令に合っていなかった
- 完成したデザインが施設イメージと大きく異なっていた
- 公開後の修正に高額な追加費用が発生した
こうした事態を防ぐには、要望・仕様を文書で明確にし、仕様書や契約書に盛り込むことが重要です。
防止策:契約時・制作途中での確認ポイント
トラブル防止のため、下記の点を契約や進行中に必ず確認しましょう。
- 納品物の仕様・機能・ページ数を明文化(仕様書)
- スケジュールや修正回数、追加費用発生条件を契約書に明記
- デザイン案・原稿案は逐次確認・承認する体制
- 法令対応や情報公開義務の内容を制作会社と共有
曖昧なまま進行すると、納品後のトラブルにつながりやすいため注意が必要です。
利用者・家族・スタッフの声を活かす方法
インタビューやアンケートの活用
実際にサービスを利用している方やそのご家族、現場スタッフの声は、信頼性を高める重要な要素です。
- 利用者・家族へのインタビュー記事
- スタッフの仕事紹介ややりがいの声
- アンケート結果のグラフ化・掲載
こうしたコンテンツは、施設選びを検討している人への説得力となります。
掲載時のポイントと注意点
声を掲載する際は、プライバシーや表現内容に配慮することが大切です。
- 個人が特定されないよう配慮した匿名化(例:イニシャルや年代のみ掲載)
- 事前に掲載内容について本人やご家族の確認・同意を得る
- ネガティブな声も誠実に掲載し、改善策も記載
施設の透明性や誠実さを伝えるための工夫が求められます。
地域・他機関との連携情報の発信方法
地域包括ケア・他施設との情報共有事例
地域包括ケアや他の福祉・医療機関とのネットワークは、施設の信頼性や利用者の安心感につながります。
ホームページでは、
- 地域包括支援センター等との連携紹介
- 地域イベントや共同プロジェクトの報告
- 医療機関・行政機関との協力体制や連絡先掲載
など、連携実績を積極的に発信すると、地域密着型の施設であることをアピールできます。
情報公開の範囲とバランス
連携情報を掲載する際は、守秘義務や個人情報保護にも注意が必要です。
- 他機関やイベント参加者の同意を得て掲載
- 個別の事例は個人が特定されないよう表現
- 行政との協力内容は公表可能な範囲にとどめる
情報の出し過ぎによるトラブルを避けるため、掲載範囲のガイドラインを施設内で決めておきましょう。