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介護ウェブサイト制作で失敗しない色選びの実践ガイド
目次
はじめに
介護施設や訪問看護、社会福祉法人などのウェブサイト制作において、デザインの印象や使いやすさを大きく左右するのが「色選び」です。しかし、高齢者やそのご家族、スタッフ、地域の方々など多様な利用者層を想定した場合、単に「おしゃれ」「目立つ」だけの配色では十分と言えません。
本記事では、2025年現在の介護ウェブサイト制作における色選びの基礎知識から、実際の設計・運用で押さえるべきポイント、最新アクセシビリティ基準、実務者が陥りやすい失敗と回避策まで、具体例を交えて徹底的に解説します。
初心者の方でも理解できるよう用語を丁寧に解説し、実際の現場で役立つ実践的な内容になるよう心がけています。
介護ウェブサイトにおける色選びの基本

色彩心理とユーザー印象の関係
色には人の感情や行動に影響を与える「色彩心理」があります。介護ウェブサイトの場合、安心感や信頼感、清潔感などを意識した配色が重要です。
- 青系:信頼感・安心感・清潔感を与える
- 緑系:癒やし・安定・健康を連想させる
- オレンジ・黄色:親しみやすさ・温かみ・元気さを演出する
- 赤系:注意喚起やアクセントに使用(多用は避ける)
利用者層の年齢や目的に応じて、どの色をメインカラーに据えるか検討することが大切です。
カラーユニバーサルデザインの基礎
カラーユニバーサルデザイン(CUD)とは、色覚の多様性を考慮し、誰もが情報を正しく認識できる配色設計の考え方です。日本人男性の約5%、女性の約0.2%に色覚多様性があるとされており、介護ウェブサイトでも配慮が不可欠です。
色だけで情報を区別しない・コントラストを十分にとるなど、基本的なCUDの考え方も解説します。
主な利用者層と色選びの注意点
高齢者の視認性と配色
高齢者は加齢に伴って色の識別能力やコントラスト感度が低下する傾向があります。特に青系や緑系は判別しづらくなる場合があり、「明度差(明るさの違い)」が十分でないと読みづらくなります。
- 背景と文字色ははっきりとした明度差をつける
- 淡い色同士や、彩度の低い配色は避ける
- 白地に濃い青・黒・緑などコントラストの強い組み合わせを意識する
ご家族・地域住民向けの配色ポイント
ご家族や地域の方は、施設の雰囲気や信頼性、親しみやすさを重視します。
- メインカラー:信頼感のある青・紺・緑系
- サブカラー:温かみのあるオレンジ・ベージュ・黄色系
- アクセントカラー:コーポレートカラーや施設の特長色
ブランドイメージや地域性も考慮し、過度な派手さや奇抜さは避け、落ち着いたトーンにまとめるのが一般的です。
スタッフ・採用ページの配色配慮
介護職員の採用情報ページなど、スタッフ向けコンテンツは「働きやすさ」「安心感」「活発さ」を伝える色使いがポイントです。
- 信頼感+活気:青+オレンジなどの組み合わせ
- 過度に派手・暗い色調は避ける
- 応募ボタンやエントリー導線は目立つ色(例:緑やオレンジ)を設定
ただし、全体のバランスを損なわない配色調整が必要です。
介護サイトにおすすめの配色パターンと組み合わせ例

よく使われる配色パターン一覧
| パターン名 | メインカラー | サブカラー | アクセントカラー | 特徴・用途 |
|---|---|---|---|---|
| 安心感重視型 | 青(#2b6da3) | 白・グレー | オレンジ | 信頼・清潔感を重視するトップページ |
| 温もり重視型 | アイボリー・ベージュ | オレンジ・茶色 | 緑 | 家庭的・親しみやすさを演出 |
| 元気・活力型 | 緑(#5ba150) | 黄色 | 青 | デイサービスなど明るい雰囲気に |
| 上品・高級感型 | 紺・グレー | 白・シルバー | 金・ベージュ | 有料老人ホーム等で落ち着き・高級感を表現 |
配色設計での具体的な手順
1. ターゲット(利用者層)を明確化し、求められる印象を整理
2. メインカラー(サイト全体のイメージを決定)を選定
3. サブカラー(見出し・ボタン・区切り要素など)を2〜3色選定
4. アクセントカラー(訴求ボタンやアイコンなど目立たせたい箇所)を1色選定
5. コントラストや色弱対応をチェックし、全体のバランスを調整
必要に応じて、カラーパレット作成ツールなども活用しましょう。
実際の介護ウェブサイト事例から見る配色傾向
2025年現在、介護系ウェブサイトの多くは「青・緑・オレンジ」を軸に、白やグレーを組み合わせた落ち着きのある配色が主流です。
- 文字色は黒または濃紺を基本にし、背景色とのコントラストを十分にとる
- バナーやボタンに原色系を使う場合は、面積を小さく調整する
- 高齢者が迷わないよう、同系色の過度なグラデーションや装飾は避ける
アクセシビリティと色のコントラスト基準
WCAG 2.1のコントラスト基準とは
現在のウェブアクセシビリティ国際規格である「WCAG 2.1」では、テキストと背景のコントラスト比について以下の基準が定められています。
- 通常テキスト:4.5:1 以上
- 大きな文字:3:1 以上
コントラスト比が不足していると、内容が読みにくくなり、視覚障害や色覚多様性のある利用者が情報を正しく得られなくなります。
コントラストチェックの方法とツール紹介
配色のコントラストが適切かどうかは、専門のツールを使って数値でチェックできます。
- Color Contrast Checker(WebAIM)
- Adobe Color(カラーパレット作成とコントラスト確認)
- 日本工業規格 JIS X 8341-3 準拠ツール
これらのツールに色コードを入力するだけで、基準を満たしているか即座に判定できます。
色覚多様性への配慮(CUD実装例)
色弱の方には、赤と緑、青と紫などの区別が難しい場合があります。色だけでなく「形」「線」「パターン」などを併用して、情報の伝達を補強しましょう。
例:重要なお知らせは「赤い文字+アイコン」「枠線付きボックス」など、複数の方法で強調する。
ブランドイメージと施設コンセプトを活かす色選び
コーポレートカラーの活用と注意点
運営法人や施設が既にブランドカラーを持っている場合は、ウェブサイトでも一貫性を持って使用することが望まれます。ただし、ウェブ上では色がモニターごとに再現性が異なるため、彩度や明度を微調整して使いやすいトーンに整える工夫が必要です。
- 強すぎる原色はWeb用に少しトーンダウンする
- サブカラー・アクセントカラーで視認性とバランスをとる
施設の特長・地域性に合わせたカラー戦略
地域密着型なら地元の自然や伝統色を意識した配色、都市型なら現代的で洗練されたカラーリングなど、施設の特長や立地によっても最適な配色は異なります。
例:
- 郊外型施設→緑やベージュ系で自然・安心感を重視
- 都市型施設→グレーや紺+アクセントカラーで現代的な雰囲気に
ユーザビリティ向上のための色使いの工夫

ナビゲーション・ボタンの色設計
主要メニューやボタンには、他と明確に区別できる色を使い、利用者の迷いを防ぎます。
- ナビゲーションバーは背景色とアイテム色のコントラストを十分にする
- 「お問い合わせ」「資料請求」等のボタンは、サイト内で最も目立つ色(例:オレンジ、緑)を設定
- ホバーやアクティブ時の色変化も忘れずに設計
読みやすい文字色・背景色の組み合わせ
介護サイトでは本文の可読性が最重要です。
- 白地に黒(#000000)または濃紺(#1a1a40)
- 淡色背景の場合は、文字色をより濃い色に
- グレー背景は薄すぎると判読性が低下するので注意
強調したい箇所は「太字+色」など複数要素で目立たせましょう。
情報分類と色の使い分け
サービス別、イベント情報、スタッフ紹介などカテゴリごとに色を分けることで、訪問者の直感的な理解を促します。ただし、やりすぎは混乱の元となるため、色数は4色以内に抑えるのが推奨されます。
よくある色選びの失敗例とその回避策
コントラスト不足による視認性の低下
淡い背景に薄い文字色、同系色グラデーションの使いすぎなどで、内容が判読しにくくなるケースが多発しています。コントラスト比の数値チェックを習慣にしましょう。
過度なカラフル・派手な配色
「おしゃれ」「目立たせたい」意図から多色使いにしてしまい、かえって落ち着きや信頼感を損ねることがあります。色数は基本3〜4色に抑え、アクセントのみ目立たせるのがポイントです。
色だけで情報を伝えている
例えば「赤文字=注意」「青文字=リンク」など、色のみで意味を持たせてしまうと、色覚多様性の方には内容が伝わりません。必ず「アイコン」「下線」など複数の表現方法を併用しましょう。
配色支援ツール・リソースの活用方法

おすすめの無料配色ツール
- Adobe Color:カラーサークルやトレンドパレットが豊富
- Coolors:ワンクリックでカラーパレットを自動生成
- Color Hunt:人気のカラーパレットを一覧で確認可能
日本のカラーユニバーサルデザイン(CUD)ツール
- CUD Checker:色覚多様性への配慮をシミュレーション
- JIS X 8341-3 準拠 チェックツール:国内ガイドラインに対応
カラーパレット作成の実践手順
1. メインカラーを決定し、各ツールでサブ・アクセントカラー候補を生成
2. サイトで使いたい色をサンプルページで仮適用し、見え方・印象を全体で確認
3. コントラスト比やCUD対応を必ずチェック
4. 決定したカラーパレットをデザインガイドラインとして文書化する
2025年最新の介護ウェブサイト色選びトレンド
ニュートラルカラー+アクセントが主流
2025年現在、多くの介護ウェブサイトでは白・グレー・ベージュなどのニュートラルカラーをベースに、青や緑、オレンジなどの明快なアクセントを加える配色が主流です。これにより、落ち着いた雰囲気と視認性・訴求力を両立しています。
ダークモードへの配慮
スマートフォンやPCのOS標準で「ダークモード」を利用するユーザーが増加しており、背景が黒や濃紺になるケースも想定した配色設計が求められます。透過度や色重なりのチェックも忘れずに行いましょう。
温かみ・親しみやすさを重視したパステル調
「冷たすぎない」「病院らしさを和らげる」ため、淡いパステル調の色も人気です。ただし、コントラストが下がりやすいので、文字色やアクセントの濃さでバランスをとることが重要です。
運用時の色管理と更新ポイント
カラーパレットの一元管理方法
色の使い方が担当者やページごとにバラバラにならないよう、カラーパレットやデザインガイドラインを作成し、制作・運用メンバー間で共有しましょう。
例:
- 色コード(例:#2b6da3)を全ページ共通で管理
- 用途別(見出し・ボタン・背景・アイコン等)の色指定
色の更新時に注意すべき点
イメージ刷新やリニューアル時は、既存利用者が混乱しないよう段階的な変更を推奨します。新旧カラーパターンの比較、ユーザーテスト、アクセシビリティ再チェックが重要です。
季節やイベントごとの色アレンジ活用
クリスマスや新年、春の桜イベントなど、季節・行事ごとにアクセントカラーやバナー色を変更することで、親しみやすく活気のある印象を演出できます。常設のカラーパレットと並行して、期間限定の配色運用も検討しましょう。
色選びを成功させる制作・運用ワークフロー

色選定から実装までの流れ
- 施設・サービスの目的とターゲット層を明確化
- コーポレートカラーやブランド要素を確認
- 競合・参考サイトを調査し、配色傾向を分析
- 配色ツールを使い、カラーパレット候補を作成
- アクセシビリティ・コントラストチェックを実施
- 仮デザインを実際のデバイスで確認・テスト
- 最終パレットを決定し、ガイドライン化
- 公開後も定期的にユーザーの声を収集・改善
チーム内の合意形成ポイント
色選びは個人の好みに左右されやすいため、判断基準を「ターゲット」「目的」「アクセシビリティ」「ブランド一貫性」に置き、主観に偏らない合意形成を重視しましょう。
ユーザーテストや簡単なアンケートも有効です。
色の改善・A/Bテストの実施方法
ボタン色やバナーの配色など、複数パターンを用意して実際のクリック率・利用率を比較する「A/Bテスト」も有効です。Google Optimizeなどの無料ツールも活用できます。
配色改善による成果事例と考察
コントラスト調整でお問い合わせ件数が増加した例
ある介護施設サイトでは、以前は淡いグリーン背景に薄いグレー文字を使っていたため、重要な連絡先やお問い合わせボタンが目立たず、反応率が低迷していました。配色を「白背景+濃紺文字+オレンジボタン」に変更し、視認性を大幅に向上させたところ、お問い合わせ件数が1.5倍に増加しました。
色覚多様性対応でクレームが減少した例
「色だけで区別していた」カレンダーやお知らせ一覧を、色+アイコンやパターンで情報を示すように改善した結果、色覚多様性の利用者からの「見えにくい」といった指摘が減少し、全体のユーザビリティ評価も向上しました。
ブランドカラー活用で採用応募者が増加した例
法人のコーポレートカラー(青+オレンジ)を採用ページのボタンや見出しに統一的に活用した結果、応募者数が前年度比で約20%増加した、という事例も報告されています。色の一貫性が「信頼感」「社風」を強く訴求したことが要因と考えられます。
介護ウェブサイト配色に関するよくある質問と実務者の疑問
Q. 色覚多様性対応は必須ですか?
法的な義務はありませんが、高齢者や色覚多様性のある利用者が多い介護業界では、実質的に必須と考えられます。JIS X 8341-3やWCAGのガイドラインを参考にしましょう。
Q. 施設のイメージカラーが原色ですが、そのまま使っても大丈夫?
原色は画面上で強く出すぎる場合があるため、Web用に少し彩度や明度を下げて調整するのが一般的です。補助色や背景色でバランスを取れば違和感なく使えます。
Q. 文字色は黒以外でもいい?
可読性を最優先し、黒や濃紺などコントラストの強い色を推奨します。淡色背景の場合はより濃く、パステル調の場合はグレー文字を避けてください。
Q. 季節ごとに色を変えても問題ない?
常設コンテンツの基本配色は維持しつつ、バナーや一部アクセントのみ季節色を使う方法が一般的です。全体を頻繁に変えると利用者が混乱するため注意が必要です。
Q. 無料ツールだけで十分に色選びできる?
無料ツールでも基本的な配色設計やコントラストチェックは可能です。ブランドイメージや高い独自性を求める場合は、経験豊富なデザイナーへの相談も検討しましょう。