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介護施設のウェブサイトを自作する場合と外注する場合の現実的なメリットとリスク
目次
はじめに
介護施設のウェブサイト運用は、入居者やそのご家族、地域社会との信頼関係を築くうえで欠かせません。しかし、実際に新規開設やリニューアルを検討する際、自作するべきか、外部に制作を依頼するべきか、迷うケースが多いのではないでしょうか。
本記事では、介護施設ウェブサイトの自作と外注の違いを、コスト・運用・リスク・品質・業務負担など多角的に比較し、実務担当者が納得して選択できるよう、具体的なポイントを整理します。両者の特徴や向き・不向き、失敗しやすいポイント、運用後の注意点なども交えて、現場目線で分かりやすく解説します。
介護施設ウェブサイトの「自作」と「外注」その基本的な違い
自作とは何か
ここでの「自作」とは、介護施設の職員や担当者が自分たちでウェブサイトを構築・運用する方法を指します。主な手段は以下の通りです。
- 無料・有料のCMS(例:WordPress、Wix、Jimdoなど)を使う
- テンプレートやホームページ作成サービスを活用する
- HTML/CSSの知識があればゼロから自作する
自作では、設計・デザイン・文章作成・写真撮影・公開・更新作業など、すべてを自ら行う必要があります。
外注とは何か
「外注」とは、ウェブ制作会社やフリーランス等、外部のプロに制作・運用を依頼する方法です。
依頼範囲は多岐に渡り、以下のように細分化できます。
- 企画・設計からデザイン・コーディング・公開までの一括依頼
- 部分的な依頼(例:デザインのみ、保守のみ)
- 写真撮影・文章作成などのオプション追加
外注の場合、打ち合わせや進行管理、原稿確認などの役割は担当者が担いますが、技術的な作業は外部に委ねられます。
費用面で比較する:初期費用・運用コスト・隠れた支出
自作の費用構造
自作の場合、主な初期コストは以下の通りです。
- ドメイン取得費用(年間1,000〜3,000円程度)
- サーバー費用(月額500〜1,500円程度)
- CMS利用料(無料〜月額数千円、有料テーマ購入なら数千円〜数万円)
外部の人件費が発生しないため、初期投資は比較的抑えられます。ただし、写真素材や有料プラグイン、SSL証明書など追加費用が発生する場合もあります。
外注の費用構造
外注時の費用は、内容や規模、依頼先の実績により大きく変動します。目安として、
- 小規模(5ページ程度、テンプレート活用):20万〜50万円
- 中規模(10〜20ページ、オリジナルデザイン):50万〜120万円
- 大規模(20ページ以上、独自システム):120万円〜
加えて、毎月の保守管理費(数千〜数万円)が発生するケースも多いです。見積もり時には「何が含まれているか」「後から追加費用が発生しないか」を必ず確認しましょう。
「見えないコスト」とは
自作・外注どちらにも、直接的な費用以外の「見えないコスト」が存在します。例えば、「自作の場合は担当者の作業時間=人件費」「外注の場合は打ち合わせや修正対応にかかる時間と手間」などです。予算管理の際は、表面に出ないコストにも目を向けることが重要です。
デザイン性とユーザビリティでの差
自作で実現できるデザインの限界
自作の場合、テンプレートやCMS標準機能に頼ることが多く、デザインの幅や独自性は限定されます。
一方、配色やレイアウト、フォントサイズなどは自由に調整可能ですが、高齢者やご家族が見やすい・迷わない設計(アクセシビリティ)には専門知識が必要です。特に、バリアフリー対応やスマートフォンからの見やすさを意識する場合、一般的なテンプレートのままでは十分とは言えません。
外注によるオリジナル性と専門性
外注の場合は、施設の特徴や運営方針、利用者目線の動線設計など、オーダーメイドの提案が可能です。
プロのデザイナーがターゲット(高齢者・家族・地域関係者)に合わせた配色やフォント、写真の使い方を工夫し、施設の信頼性や安心感を強調できる点が大きなメリットです。また、アクセシビリティやレスポンシブデザイン、最新のデザイントレンドへの対応も期待できます。
情報発信の質と内容の深さ
自作の場合の情報設計と発信
自作では、施設スタッフが自ら原稿や写真を用意するため、日々の活動や行事をリアルタイムで反映しやすいメリットがあります。
ただし、専門知識が不足していると、「情報が散らばる」「法律で必要な表示事項が抜ける」「文章が不明瞭」といった問題も発生しがちです。特に、介護保険制度や重要事項説明書など法的情報の掲載には注意が必要です。
外注の情報設計と取材力
外注の場合、ライターやディレクターがヒアリングや現場取材を通じて、第三者目線で施設の強みや特色を整理し、分かりやすくまとめてくれるのが特長です。法令遵守の観点から「必要な掲載項目」を網羅できる場合が多く、文章の分かりやすさや説得力も高まります。
一方、施設独自の日々の出来事や細かな更新は、依頼内容によっては自分たちで追記する必要があります。
セキュリティ・法令対応・リスク管理
自作時のセキュリティ課題
自作サイトは、セキュリティ対策の知識や経験が不十分だと、以下のようなリスクが高まります。
- CMSやプラグインの脆弱性を放置する
- SSL証明書(HTTPS化)未対応
- 個人情報保護方針やプライバシーポリシーの不備
これらはサイバー攻撃や情報漏洩、行政指導など重大なトラブルにつながる可能性があります。
外注時の法令遵守と保守体制
外注先の多くは、最新のセキュリティ基準や関連法(個人情報保護法、障害者差別解消法、ウェブアクセシビリティ基準など)に配慮した設計・運用を行います。また、定期的なバックアップや脆弱性対策、トラブル発生時の迅速なサポートも期待できます。ただし、全ての制作会社が法令を熟知しているとは限らないため、「実績」や「サポート体制」の有無を必ず確認しましょう。
運用・更新のしやすさと担当者の負担
自作の運用フロー
自作の場合、日々の更新やお知らせ、スタッフ紹介ページの追加なども自分たちで設定・発信します。操作を覚えるまでは時間がかかりますが、慣れれば気軽に情報発信できる点は大きなメリットです。
ただし、多忙な介護現場では「担当者が変わる」「引き継ぎが曖昧」「更新が止まる」といった課題が起こりやすいので、操作マニュアルの作成や複数人での管理が推奨されます。
外注時の運用・保守サポート
外注の場合、「更新作業も依頼する」「CMS導入で自分たちで更新できる設計にしてもらう」など柔軟な運用が可能です。
定期保守契約を結べば、ソフトウェアのアップデートや障害対応も任せられ、担当者の負担は軽減されます。ただし、軽微な修正でも費用や時間がかかる場合があるため、「どこまでが保守範囲か」を事前に確認しましょう。
求められる知識・スキルと学習コスト
自作に必要なスキルセット
自作には、以下のような基礎知識が求められます。
- HTML/CSSの基礎知識(レイアウトや色の調整)
- CMSの使い方(記事投稿・画像挿入・プラグイン管理)
- 画像編集(写真を適切なサイズ・明るさに調整)
- SEOやセキュリティの初歩
これらのスキルは独学や研修で身につけられますが、学習や調整にかかる時間も考慮する必要があります。
外注時に求められる担当者の役割
外注の場合、専門的なウェブ技術は不要ですが、「施設の特徴や伝えたいことを整理する」「原稿や写真を準備する」など、情報発信の責任は残ります。また、制作会社と円滑にやり取りするための「最低限のウェブ用語理解」や「納品物のチェック力」も求められます。
スムーズな制作進行のためには、担当者自身が「発信したい情報の優先順位」や「利用者目線」を意識することが重要です。
SEO・集客力の違い
自作サイトのSEO課題
自作サイトでは、SEO(検索エンジン最適化)の知識やノウハウが乏しい場合、「検索で見つけてもらえない」「アクセス数が伸びない」といった問題が生じることがあります。
具体的には、
- タイトルや見出しの最適化不足
- 画像にalt属性(説明文)がない
- モバイル対応が不十分
- ページ表示速度の遅延
など、細かな設定が成果に直結します。
外注によるSEO対策の標準化
外注では、標準的なSEO対策が導入されることが多く、ターゲットとなるキーワード選定や内部リンク設計、GoogleマップやSNS連携など、集客面の土台が整います。
ただし、SEOに強い業者を選ぶ・成果報酬型や運用型の契約内容を見極めるなど、依頼先の選定眼も不可欠です。制作後の集客強化(ブログ更新・広告出稿)は、追加オプションとなる場合があります。
自作が向いている介護施設・外注が適しているケース
自作が向いているケース
以下の条件に当てはまる場合は、自作のメリットが生かせます。
- 予算が厳しく、初期費用を最小限に抑えたい
- 情報発信やサイト更新をこまめに行いたい
- 担当者にウェブ制作の経験や興味がある
- 「とりあえず簡易な案内ページを作りたい」など、最低限の情報掲載が目的
外注が適しているケース
次のような場合は、外注が有効です。
- 施設の信頼性やブランドイメージを重視したい
- 高齢者やご家族が使いやすい設計を重視したい
- 法令遵守やセキュリティ対策に不安がある
- 集客や採用強化など、成果につながるサイトを目指す
- 担当者の業務負担を軽減したい
自作・外注それぞれの制作進行と必要な準備
自作の制作フローと注意点
自作時の一般的な流れは以下の通りです。
- 目的とターゲット(誰に何を伝えたいか)を明確化
- 掲載内容の整理(施設紹介、アクセス、料金、サービス内容など)
- 写真素材や原稿の準備
- CMSやテンプレートの選定・初期設定
- ページ作成・プレビュー・調整
- 本公開・検索エンジンへの登録
注意点は、「最初から全てを完璧に目指さず、まずは最低限の情報から始めて徐々に充実させる」ことです。また、定期的なバックアップやセキュリティアップデートも忘れずに行いましょう。
外注の制作フローと担当者の準備
外注時の主な流れは以下の通りです。
- 複数社から見積もり・提案を受ける
- 業者選定・契約締結
- 初回打ち合わせ(目的・掲載内容・デザイン要望の確認)
- 原稿や写真素材の準備・提出
- デザイン案・構成案の確認&修正
- 本制作・最終チェック・納品
- 公開・運用開始・保守体制の確認
担当者は、施設の魅力や特徴を整理し「伝えたいこと」を明確にすることが重要です。また、修正依頼や内容確認を迅速に行うことで、全体の進行がスムーズになります。
よくあるトラブルとその回避策
自作で起こりやすいトラブル
自作の場合、以下のような問題が頻発します。
- 更新担当者がいなくなりサイトが放置される
- 誤字脱字やリンク切れ、表示崩れが放置される
- 法令改正(重要事項説明書のネット掲載義務化など)に対応できない
- 画像・文章の著作権違反
- バックアップ未実施によるデータ消失
これらは、運用マニュアルの整備や複数人での管理体制、定期的なチェックリスト運用でリスクを減らせます。
外注で起こりやすいトラブル
外注に多いトラブル例は以下の通りです。
- 思った通りのデザイン・内容にならない
- 費用や納期の追加・遅延
- 保守契約解約後、更新方法が分からない
- 制作会社の倒産や担当者不在による対応不能
これらは、「要望の明確化」「契約内容の文書化」「運用マニュアルの納品」などを徹底することで回避できます。
選択時に押さえておきたい判断基準
自作・外注の判断基準一覧表
比較項目 | 自作 | 外注 |
---|---|---|
初期費用 | 安価(数千〜数万円) | 高額(数十万〜) |
運用コスト | 担当者の作業次第 | 保守費用が発生 |
デザイン・機能 | テンプレート中心、独自性は限定的 | オーダーメイド、要望反映可能 |
情報発信力 | 担当者次第、こまめな発信が容易 | 設計・表現のプロサポートあり |
セキュリティ・法令対応 | 自己責任、知識が求められる | 業者により標準化・サポートあり |
担当者の負担 | 大きい(学習・更新・維持管理) | 分担可能、業務負担は軽減 |
緊急時の対応 | 自己解決が基本 | サポート窓口あり |
判断時のチェックリスト
選択に迷った際は、以下の観点で比較しましょう。
- 予算はどこまで確保できるか
- 伝えたいこと・達成したい目的は明確か
- 担当者にウェブ運用の経験・学習意欲があるか
- どれだけの頻度で情報発信したいか
- 法令やセキュリティへの対応力があるか
- 外部業者との連携体制は整っているか
今後の制度変更やウェブ技術進化への対応
介護業界のウェブ関連制度動向
2025年には介護事業所の「重要事項説明書のウェブ掲載」が義務化されるなど、制度改正が相次いでいます。今後も、情報公開の透明性やアクセシビリティへの要請は一層高まる見通しです。
こうした法改正に迅速・確実に対応するには、知識のアップデートや外部サポートの活用が有効となります。
ウェブ技術とユーザー行動の変化
スマートフォン利用の拡大や音声検索、SNS連携など、ユーザーの情報取得手段は多様化しています。
自作・外注どちらを選ぶ場合でも、「今だけでなく数年先を見据えた拡張性」「技術・デザインの陳腐化への対策」が求められます。特に、定期的なリニューアルや機能追加のしやすさを意識しましょう。
まとめ:介護施設ウェブサイトの自作と外注は目的と体制で最適解が変わる
介護施設のウェブサイト制作を「自作」するか「外注」するかは、単純なコスト比較だけでなく、施設の目的、担当者のスキル、法令対応や業務負担など多面的に考慮する必要があります。
自作は「費用を抑え小回りが利く」一方で、品質や法令面、担当者の負担に注意が必要です。外注は「信頼感や専門性」を高めやすい反面、予算確保やコミュニケーション力が問われます。
現場の実情や今後の運用体制を踏まえ、どちらが自分たちの施設に合っているか、判断の一助としてご活用ください。